秋の味覚である干し柿は、栄養価が高いドライフルーツで、ついつい食べ過ぎてしまうこともありますよね?
食べ過ぎると、どのような影響があるのか?
1日の適切な量は?
どれくらいが食べ過ぎになるのか?
知りたくなりましたので徹底的に調べてみました!
目次
干し柿を食べ過ぎるとどうなる?
まずはじめに、干し柿を作るには、柿の品種でいうと「渋柿」を使います。
ヘタを取り、皮を剥いで、熱湯で消毒しますが、殺菌するには沸騰したお湯に10秒ぐらいさっとくぐらせます。
そして常温で冷ました後、日当たりが良く、風通しの良いところで干します。
ビニール紐を使用して干すと、カビが生じにくいのでオススメです。
カビをできる限り生えにくくするため、気温が下がる11月中頃以降からが干すのに適しています。
また、柿どうしがくっ付いているとカビが生えやすくなりますので注意してください。
柿を干して約2週間~1ヶ月の間に、柿をやさしく揉むと繊維質がくずれて柔らかい状態になりますので、お好みの柔らかさで干し柿を楽しんでください。
柿の渋みは、柿に含まれている渋み成分「タンニン」が口の中で溶けることが原因です。
タンニンは可溶性(水に溶ける)と不溶性(水に溶けない)があり、可溶性だと渋みを感じ、不溶性だと渋みは感じません。
渋柿を乾燥させることにより、水溶性のタンニンが不溶性に変化して甘さが増した状態なります。
干し柿は、食物繊維やカリウム、ビタミンAのもとになるカロテンなどのビタミンが豊富に含まれており、栄養価が高い食品です。
しかし、食べ過ぎてしまうとこれらの栄養価を摂り過ぎて栄養の偏りが生じ、体に様々な不具合の症状が出る可能性があります。
ちなみに、甘柿や渋抜き柿の食べ過ぎの別記事はこちらにあります。
⇒「柿の食べ過ぎの影響は?どのくらいが食べ過ぎになる?」の別記事はこちらから
食べ過ぎると下痢になる?
干し柿には、甘柿や渋柿に比べて食物繊維が多く含まれています。
可食部100g(干し柿2個分)につき、
- 食物繊維 総量14.0g(水溶性:1.3g 不溶性:12.7g)
特に干し柿の食物繊維の含有量は甘柿の約9倍です。
食物繊維には、腸の調子を整えたり、便秘改善に効果があります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、食物繊維の1日当たり摂取目標量を18歳以上の女性は17g以上、男性は19g以上としています。
干し柿の大きさにもよりますが、一般的な大きさの干し柿(50g)を2個食べるだけで、1日当たり摂取目標量の70%~80%の食物繊維を干し柿から摂取することができます。
このように、干し柿は効率良く食物繊維を摂取できる食品です。
食物繊維は水に溶けやすい水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けられますが、干し柿は水溶性、不溶性共に含まれており、特に不溶性食物繊維が多く含まれています。
⇒食物繊維の詳細はこちらの記事に書いてあります。
不溶性食物繊維は便の量を増やし、腸のぜん動運動を活発にして排便を促すので、便秘の改善には効果があります。
腸は食べ物の水分を吸収して固形化する働きをしますが、不溶性食物繊維を食べ過ぎると、水分をうまく吸収できなくなるため、水分を多く含んだ便が排出されるので下痢になる場合があります。
更に水溶性、不溶性共に「ペクチン」が含まれており、通常はぜん動運動を活発にして便秘の改善に効果をもたらしますが、ペクチンを摂り過ぎると、腸を更に刺激するため下痢になる場合があります。
また、ペクチンを摂り過ぎると、コレステロールだけでなく、カルシウム・鉄・亜鉛などの必須ミネラルの吸収をも妨げてしまうこともあるのです。
食べ過ぎると便秘や腹痛になる?
腸が正常に働いていない方や便秘の方が不溶性食物繊維を食べ過ぎると、腸を更に刺激するため、ぜん動運動がより活発化し、腸内の便の量が増えることで腹痛を起こしたり、便秘がさらに悪化する恐れがあります。
干し柿には渋み成分「タンニン」が含まれています。
干し柿に含まれているのは主に不溶性のタンニンです。
タンニンはポリフェノールの一種ですが、タンニンの特徴として「収斂(しゅうれん)」作用があります。
収斂(しゅうれん)作用は、腸の粘膜のタンパク質と結合して保護膜を作る作用です。
粘膜への刺激が和らぐので、通常は腸のぜん動が抑えられ、下痢が収まります。
干し柿を食べ過ぎてタンニンを過剰に摂りすぎると、更に腸のぜん動運動が弱くなるので、それが
便秘の原因になります。
タンニンを過剰に摂取すると、腸にできる保護膜により鉄分の吸収を妨げてしまい、それが貧血の原因になることがあるので、特に妊娠中の方は食べ過ぎに注意してください。
食べ過ぎると太る?
干し柿のカロリーは
可食部100gあたり(干し柿2個分)
- 276kcal
になります。
干し柿を5個食べるとすると、カロリーは
- 276×2.5=690kcal
となります。
1日に必要なエネルギーの基本量は2000kcal~2400kcalぐらいですので、必要なエネルギーの約30%~35%が干し柿から摂れる計算になります。
また、干し柿には炭水化物(糖質)も含まれています。
可食部100gあたり(干し柿2個分)
- 71.3g
になります。
干し柿を5個食べるとすると、炭水化物(糖質)は、
- 71.3×2.5=178g
となり、お茶碗1杯の白米(200g)に含まれる炭水化物(糖質)約74gと比べると、白米約2.4杯分になり、食べ過ぎると太るリスクが高くなることがわかります。
普段の食生活の中で、ごはんやラーメン、パスタなどから炭水化物(糖質)を摂っているでしょうから、それに加えて干し柿を食べ過ぎるのは太るリスクが更に高くなります。
干し柿を食べ過ぎても、普段の食事から炭水化物(糖質)の摂取量を減らすと、1日の食事の総カロリー(炭水化物)は減る場合があり、結果的にダイエットにつながるかもしれません。
干し柿にはダイエットの助けになる成分として、脂質や糖質を燃焼させやすくする「リコピン」や、利尿作用によりデトックス効果がある「カリウム」が含まれていますので、甘いお菓子やジュースよりも遥かに健康的です。
干し柿を食べ過ぎても普段の食事の仕方を変えればイエット効果も期待できます。
食べ過ぎで柿胃石になる?
干し柿を食べ過ぎると渋み成分のタンニンが胃液中で固まり、摂取した食物繊維が含まれて「胃石」という固体を形成することを「柿胃石」(かきいせき)といいます。
柿胃石になると、初期症状として嘔吐、腹部の痛みなど、アレルギーと同じようなの症状が急性で現れますが、重症化すると腸閉塞を起こす可能性がある怖い病気です。
柿を普通の量を食べている分には柿胃石になりませんが、食べ過ぎると柿胃石になるリスクが高くなりますので食べ過ぎには注意してください。
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妊娠中の食べ過ぎの影響は?
甘柿や渋柿など生柿は、水分が多く含まれていますので、食べ過ぎると体を冷やし過ぎてしまい、その結果、下痢などの症状を引き起こしますが、一方、干し柿は水分が少ないので内臓を温めてくれます。
しかし、妊娠中は貧血が起こりやすく、その原因は鉄分が不足することによって起こる「鉄欠乏貧血症」の場合があります。
ですから、妊娠中は積極的に鉄分を摂ることを勧められています。
ですが、干し柿を食べ過ぎると、干し柿に含まれるタンニンが鉄分の吸収を妨げてしまうので、貧血症になりやすい方は食べ過ぎに注意してください。
また、食べ過ぎは糖質の摂り過ぎにもなるため、妊娠糖尿病を発症する原因にもなり得ます。
妊娠糖尿病は妊娠中に糖尿病と診断される病気で、本来、糖質を胎児の栄養分として摂り込まれる結果、血糖値を下げるためのインスリンの働きを弱めるホルモンが、胎盤から分泌されるので、母体が糖質を分解しにくくなることで発症します。
さらに、妊娠高血圧症が悪化すると、流産や早産を引き起こすリスクが高くなるばかりではなく、胎児発育不全や胎児機能不全を引き起こすリスクも高くなる恐れがあるため注意が必要です。
ビタミンAの影響は?
干し柿は、干す過程でビタミンCは少なくなりますが、ビタミンAに変換されるβカロテン等は豊富に含まれています。
可食部100g当たり 干し柿2個分
- ビタミンA βカロテン当量 1400μg
レチノール活性当量 120μg
となっており、甘柿などの生柿よりも3~4倍ものビタミンAが含まれています。
ビタミンAはレチノールと呼ばれ、肉類、乳製品、卵、魚介類からの動物性食品から摂ることができ、皮膚を健康に保つ働きをします。
体内でビタミンAに変換するカロテノイドは「プロビタミンA」と呼ばれ、プロビタミンAの代表には「βーカロテン」があります。
βーカロテンは柿のような果物類等の植物性食材に含まれており、抗酸化作用等があります。
このように、ビタミンAには動物性と植物性の二つに分類されるのです。
ビタミンAの妊娠中の効果としては、胎児に必要な臓器の形成や細胞分裂の促進を助けます。
しかし、ビタミンAを摂取し過ぎると、胎児の先天性異常などに発展する可能性が高くなることが知られています。
動物性のレチノールは、体内に摂り込まれると、排出されないまま蓄積されていきます。
ですから、妊娠中に動物性のレチノールを過剰に摂取するのは避けた方が無難です。
一方、βーカロテンは体内でビタミンA(レチノール)に変換されますが、変換されたものは植物性のビタミンAであり、必要な栄養分以外は体外に排出される成分なので、体内に蓄積されることがありません。
なので、現時点ではβーカロテンの食事摂取基準はありません。
ですから、柿を過剰に摂取してもビタミンAの蓄積の問題はありませんので安心してください。
糖尿病に影響はあるの?
糖尿病の方やその予備軍の方は、血糖値が異常に高くなり、様々な合併症を引き起こすため、血糖値をコントロールする食事療法等が必要です。
血糖値の上昇速度を示す指標であるグリセミックインデックス(GI)値を見ると、
ブドウ糖を100とした場合、
- 干し柿のGI値:57.3
です。
例えば、他の果物では、
- スイカのGI値:72
で干し柿よりも高く、
- 白米のGI値:77
であることから、干し柿のGI値が比較的低い値であることがわかります。
血糖値が上昇すると、インシュリンが膵臓(すいぞう)から分泌されて血糖値の上昇を抑えます。
インシュリンは脂肪ホルモンなので、血糖値の上昇を抑えるだけでなく、脂肪の分解を抑制します。
食べ過ぎると炭水化物(糖質)の量も増えるので、インシュリンが必要以上に分泌され、肥満の原因になります。
糖尿病方やその予備軍の方は、インシュリンの量が少なくなったり、また、分泌されても血糖値の上昇を抑える働きが悪くなると血糖を上手く細胞へと取り込むことができずに、血糖値が高い状態(高血糖)が続きます。
高血糖が長期間続くと、全身の血管がダメージを受け続け、様々な合併症を引き起こす原因になりますので、食べ過ぎには十分に注意してください。
腎臓病に影響はあるの?
干し柿にはカリウムが豊富に含まれています。
可食部100g当たり 干し柿2個分
- 干し柿670mg
となっています。
カリウムは筋肉や神経の働きを補助し、利尿作用やナトリウムの排出を促進する作用があり、腎臓にとって良い働きをします。
カリウムを多く摂っても、健康な方は1日のカリウム摂取量の90%は尿として排出され、残りは便として排出されます。
しかし、腎臓の機能が弱い方や腎臓病の持病がある方は、カリウムの摂り過ぎが問題になる恐れがあります。
腎臓に障害があると、腎臓によるカリウムの排出機能が低下し、カリウムの血中濃度が高くなります。
カリウムの濃度が上がると、不整脈や、最悪の場合には心臓が停止する危険があります。
日本人のカリウムの平均摂取量は、
- 1日2400mg程度
ですが、腎臓病など腎臓に障害がある方の1日の摂取量は、病状によって、
- 1日1500mg~2000mg以下
を目安に抑えなくてはなりません。
干し柿5個分を食べると仮定すると、
- 干し柿670×2.5=1675mg
のカリウムを摂取することになり、1日の摂取量の目安に到達してしまうので、食べ過ぎないようにしてください。
柿アレルギーの影響は?
干し柿を食べ過ぎると「柿アレルギー」を発症することがあります。
柿アレルギーとは、柿を摂取した際に含まれるタンパク質を異物として認識し、自分の体を防衛するために過剰な反応を起こすことを言います。
目がかゆくなる、鼻水や湿しんが出るというような反応や、アナフィラキシーというぜんそくのような命に関わる重篤な反応を起こすことがあるため、注意が必要です。
乳幼児から子供まで大きな症状が出ない場合は、気づかないまま大人になることもあります。
さらに柿アレルギーは、花粉症とも密接な関係があります。
花粉症の人が、柿のような果物や野菜を食べ過ぎた場合、口の周りが赤くなってかゆくなる軽度な症状が発症したり、下痢やおう吐、発熱、呼吸困難になるアナフィラキシーという重度な症状が発症する可能性があります。
ちなみに、ラテックス(天然ゴム)を含んだゴムでも同様な症状を起こすので、これらを「口腔アレルギー症候群・ラテックスフルーツ症候群」と呼んでいます。
花粉症をひきおこす原因となるタンパク質の構造が、柿のような、フルーツや野菜などの食物や天然ゴムに含まれるタンパク質の構造と共通しているために、食物を摂取すると口腔内でアレルギー反応が生じた結果、上記のような症状を引き起こします。
これらの症状は、食後1.5時間~2時間で表れるので、表れたら直ちに柿を食べるのを止めてください。
特に乳幼児や子供は、遺伝的要素もあるので、家族間でアレルギーを持った人がいる場合は、柿を食べる前に医者に相談したり、アレルギー検査をすることをおすすめします。
1日の適切な量は?どのくらいが食べ過ぎになる?
厚生労働省と農林水産省で策定した「食事バランスガイド」で、1日当たりの果物の摂取目標量を、
- 可食部200g
の果物摂取を推進しています。
これでいくと、成人の1日の適切な量は干し柿4個分の摂取目標量に相当します。
この摂取目標量や、カロリーと炭水化物(糖質)の含有量から、干し柿の食べ過ぎになる量を想定してみました。
一般的な人(中学生~成人)はどのくらい?
干し柿10個(可食部約500g)
- 干し柿 カロリー1380kcal 炭水化物(糖質)356.5g
ですので、干し柿10個以上は食べ過ぎになりますのでそれを目安にしてください。
ただ、この量を食べると、カリウムの利尿作用によりトイレがかなり近くなると思われます。
子ども(小学生)はどのくらい?
干し柿5個(可食部約250g)
- 干し柿 カロリー690kcal 炭水化物(糖質)178.3g
子どもにとってはどのくらいが食べ過ぎになるか?
それは、大人の食べ過ぎの量の半分ぐらいと考えます。
ですから干し柿5個以上は食べ過ぎになりますのでそれを目安にしてください。
ちなみに、食べ過ぎるとカリウムの利尿作用によりトイレが近くなり、さらにオネショをすることもあるようなので気をつけてください。
妊娠中はどのくらい?
干し柿4個(可食部約200g)
- 干し柿 カロリー552kcal 炭水化物(糖質)142.6g
妊娠中は「食事バランスガイド」の1日当たりの果物摂取目標量200gを、理想の摂取量すると、干し柿4個が目安になり、それ以上は食べ過ぎになります。
糖尿病の人はどのくらい?
干し柿1/4個(可食部約12.5g)
- 干し柿 カロリー69kcal 炭水化物(糖質)17.8g
日本糖尿病学会は「糖尿病食事療法のための食品交換表」の中で、糖尿病患者が制限された摂取エネルギー量のうち、栄養バランスのとれた食事を摂るために、生鮮果物を1日80kcalを摂るように提案しています。
干し柿の場合1/4個に相当し、これ以上は食べ過ぎになりますので注意してください。
このように、食べ過ぎの量を示しましたが、あくまでも目安として考えてください。
特に妊娠中の方や糖尿病の方は、かかりつけの医師に食べる量などを相談してから食べるようにしたほうが安心です。
おまけ:干し柿の作り方動画
この動画を観ていただければどんな方でも作れると思います!
まとめ
1日の適切な量は、成人の場合
- 可食部200g(干し柿4個分)
までにしましょう。
干し柿はどのくらいが食べ過ぎになるか?
- 一般人(中学~成人):干し柿10個(可食部約500g)
- 子ども(小学生):干し柿5個(可食部約250g)
- 妊娠中:干し柿4個(可食部約200g)
- 糖尿病の方:干し柿1/4個(可食部約12.5g)
ぐらいの目安を示しましたので参考にしてください。
このように、適度な量ならば問題がない柿でも、食べ過ぎると様々な症状を引き起こす可能性がありますので、食べ過ぎには注意してください。